BtoBの買い手は、できれば営業と話さずに買いたい。Gartnerが2026年に出した調査は、その傾向をはっきり数字で示しました。ところが同じ調査群には、逆に見える結果も並んでいます。買い手はAIで集めた情報を、最後は営業に確かめたいと考えているのです。
何が起きているか
Gartnerは2026年3月、BtoBの買い手646人への調査(2025年8〜9月実施)を発表しました。Digital Commerce 360の報道によると、67%が営業担当者を介さない購買体験を望んでいます。直近の購買でAIツールを使った買い手は45%でした。
5月には、同じ時期に行った645人の調査から別の結果が出ています。Gartnerの発表では、69%の買い手が「AIが出した情報を営業担当者に確かめたい」と答えました。買い手が1回の購買で参照した情報源は平均7つ。生成AIで誤解を招く情報に出会いやすいと答えた人は51%、営業担当者から出会いやすいと答えた人は49%でした。AIも営業も、買い手からは同じくらい疑われています。
Forresterの「The State of Business Buying, 2026」(2026年1月発表)も同じ方向を指しています。買い手は生成AIを調べものの入口に使い、その答えが不完全で信頼しきれないため、社内の同僚や社外の信頼できる人に確かめに行く。典型的な購買の意思決定には、社内13人と社外9人が関わるとされます。答えを出す道具が増えたぶん、答えを確かめる相手の価値が上がっている。三つの調査は、そろってこの変化を指しています。
なぜそうなっているか
買い手は、調べる作業を自分で済ませられるようになりました。製品の比較も、価格の当たりをつけるのも、AIと公開情報で足ります。営業に会う理由のうち「情報をもらう」は、ほぼ消えました。
一方で、決める責任は軽くなっていません。社内外で20人以上が関わる購買では、誰かに「この判断で大丈夫だ」と言える根拠が要ります。AIの答えは速い反面、どこまで正しいか分かりません。そこで、最後に人へ確かめに行く。営業はその相手の候補です。
Gartnerのアナリスト、ロバート・ブレイスデル氏は「デジタルのセルフサービスを好むことを、営業の重要性が下がった合図と受け取るべきではない」と述べています。Gartnerの提言は、営業を全工程に張り付けないこと。営業にしか出せない価値がある場面に絞って関わらせる、という整理です。
もう一つの結果も見逃せません。Digital Commerce 360によると、製品が自分の役割の成果をどう良くするかを深く理解できた買い手は、質の高い購買をしたと答える割合が2倍でした。買い手が求めているのは製品説明ではありません。自分の仕事に引き寄せた価値の説明です。
日本の事業責任者にとっての意味
売上10〜100億円規模の日本のBtoB事業では、営業が今も「情報を届ける係」を担っている会社が多いはずです。カタログを持って訪問し、機能を説明し、見積もりを出す。この役割は、買い手の側から先に不要とされつつあります。
明日から考えるべきことは三つあります。
一つ目は、営業がどの場面に時間を使っているかを測ることです。SFAに商談の段階と活動の記録があれば、初回説明・デモ・見積もり・稟議支援のどこに工数が寄っているかは出せます。記録が粗くて出せないなら、それ自体が最初の課題です。
二つ目は、営業を「確かめる相手」にする材料をそろえることです。導入後の数字、他社と比べたときの弱み、導入で起きやすい失敗とその対処。買い手が社内で判断を守るために使える材料です。機能一覧ではありません。
三つ目は、役割別の価値を語れるようにすることです。同じ製品でも、経理部長と現場の課長では成果の中身が違います。買い手の役割ごとに「あなたの仕事がこう変わる」を一枚で示せるか。ここが、営業と会わずに進む買い手を、最後に自社へ戻す入口になります。




