米調査会社Forresterが2026年7月、2027年の予算策定ガイドを公表しました。1年の慎重姿勢を経て、マーケティングの責任者の多くが予算増を見込んでいます。ただ同社の勧めは「もっと使え」ではありません。増やす先と減らす先を、はっきり分けています。
何が起きているか
ガイドは、2,600人を超える事業・技術の意思決定者への調査をもとにしています。Forresterの発表では、8割を超えるリーダーが今後12か月で予算が増えると見込み、4分の1は10%以上の伸びを予想しました。マーケティング担当者に限ると、91%が2027年の予算増を見込んでいます。
BtoBに絞った数字は、Marketing-Interactiveが報じました。BtoBマーケティングの意思決定者の89%が、今後12か月で投資が増えると答えています。費目別に見ると、テクノロジーへの支出増を計画する人が80%で最も多く、人件費と施策費はそれぞれ76%でした。BtoBの予算の内訳は、施策費が37%、人件費とテクノロジーがそれぞれ32%です。
そのうえでForresterは、予算の動かし方を3つに分けて示しました。
増やすのは2つ。1つはAIエージェントが読める社内情報の整備です。方針や業務、システムの決まりを、機械が読める形に整えることを指します。もう1つが、AEO(AI検索で引用されるための最適化)によって、AIの回答の中で自社が占める存在感を高めることです。
減らすのも2つ。AIや生産性を妨げる技術的負債と、準備の整わないAIの試行です。後者は、統制、責任者、成功の基準、広げる道筋のどれかを欠いた取り組みを指します。
試すのは、合成データを使った顧客調査と、コンテンツ制作や顧客対応にAIエージェントを使うことでした。
なぜこの配分になるのか
AEOが「増やす」側に入った理由は、買い手の調べ方にあります。Marketing-Interactiveの報道は、ビジネスの買い手の94%が購買の過程で生成AIを使うというForresterの数字を引いています。AIの回答に載らなければ、営業が会う前に候補から外れます。
AEOの進め方について、Forresterの推奨は2点です。AIが読み取りやすい形で中身を書くこと。そして、顧客・パートナー・業界の専門家といった信頼できる第三者を通じて、権威を積み上げること。自社サイトを直すだけでは足りない、という立場です。
一方で、予算が増えることを、ツールを買い足す理由にしないよう釘を刺しています。重複したツール、連携の複雑さ、技術的負債を減らし、事業の目標に結びつくプラットフォームに絞る。人員を減らす前に業務の流れを組み直す。データ、統制、組織の準備といった土台を、ばらばらのAI試行より先に置く。どれも「新しく足す」より「整える」を優先する考え方です。
Forresterの最高研究責任者Sharyn Leaver氏は「2027年に成果を出す組織は、AIに最も多く使う組織ではない」と述べています。
日本の事業責任者にとっての意味
売上10〜100億円規模の日本のBtoB事業では、マーケ予算が9割の確率で増えるとは限りません。だからこそ、Forresterの「増やす・減らす」の線引きは、予算が増えない会社ほど使えます。減らす側から原資を作り、増やす側に回せばよいからです。
まず、いま払っているツールの棚卸しから始めます。SFA、MA、名刺管理、Web解析、生成AIの各種サービス。誰が、何のために、どれだけ使っているかを一覧にしてください。入っているのに使いこなせていないツールは、Forresterの言う技術的負債そのものです。重複を外すだけで、次に回す費用が生まれます。
次に、社内で走っているAIの試行を1本ずつ見ます。責任者、成功の基準、広げるまでの道筋。この3つを書けない試行は、止めるか条件を決め直します。
そのうえで、来期の予算にAEOの行を独立して立てます。金額は小さくて構いません。SEOやWeb制作の費用に混ぜず、何に使い、何で測るかを別に書くことが要点です。導入事例の制作、業界メディアや団体での露出、顧客のレビュー。AIの回答に載る材料をつくる費用は、この行にまとめて管理します。




