GTMエンジニアという肩書きが、欧州でも急に増えています。データやツールをつないで、営業とマーケの仕組みを組む職種です。一方で、この役割を組織のどこに置くかは、会社によってまったく違います。
2年で13倍。ただし大企業にはほとんどいない
人材紹介会社のTechTreeが2026年6月に出した調査によると、欧州でGTMエンジニアの肩書きに新たに就いた人は、2023年に約33人、2024年に約135人、2025年に約446人でした。2年で13倍です。現時点の在籍者は492人。米国に次ぐ規模で、世界全体の約28%を占めます。
伸びているのは小さな会社です。在籍者の57%は従業員50人未満の企業にいます。1,000人以上の企業は4%にすぎません。さらに、雇用主の約44%はマーケティング会社やコンサルティング会社でした。つまり雇う側の半数近くは、顧客の代わりに仕組みを組む「代行」の会社です。
もう一つ目を引く数字があります。肩書きは違っても同じ仕事をしている人が、約16,900人いるという推計です。肩書きの人数の約34倍です(16,900÷492、編集部の計算)。仕事そのものは、すでに多くの会社の中で誰かが担っています。
RevOpsの中に置くか、経営の直下に置くか
置き場所の違いは、先行する2社を比べるとよく分かります。
Zapierは、RevOpsの中に置きました。RevOps責任者のリンジー・ロスリスバーガー氏は、ポッドキャスト「RevOps Lab」で組織の変え方を語っています。以前のマーケティングオペレーションは、リード管理もキャンペーン設計も、全員で分け持っていました。これを、ファネルの区間ごとに担当を決める形に改めています。インバウンドの担当者はマーケターと組み、アウトバウンドはGTMエンジニアリングが受け持つ分担です。同氏は、GTMエンジニアリングは新しい機能ではなく、RevOpsがもともと持っていた技能だと見ています。RevOpsの中にあれば、どこで商談が止まるかという文脈を持ったまま作れる、という考えです。「アウトバウンドのたびにエンジニアに頼る形は好きではない」とも話しています。仕組みはエンジニアが作り、運用は現場が回す。その線引きです。
Clayは逆に、経営の直下に置きました。社内向けのGTMエンジニアリングチームは、営業やRevOpsの下ではなく、共同創業者に直接報告します。他部署からの依頼はチケットで受け、2週間のスプリントにまとめ、月2回リリースノートを付けて出します。会議のツールは各自が選んでよい。ただし条件が一つだけあります。データは必ずClayに流すこと。仕組みの設計を決められる位置に置く、という判断です。
肩書きより、何を持たせるかが先
2社の違いは、任せている範囲の違いです。Zapierはファネルの区間を持たせ、Clayはデータの流れと設計の決定権を持たせました。どちらも「GTMエンジニアを採用した」という事実より、その人が何に責任を持つかを先に決めています。
TechTreeの数字も同じことを示しています。大企業はこの肩書きをほとんど使っていません。それでも、同じ仕事をする人は肩書きの外に大勢います。採るか採らないかより、すでにいる人にどの範囲を渡すかが論点です。
日本の事業責任者が、明日考えること
売上10〜100億円規模で、SFAとMAは入っているが回り切っていない。そういう事業では、仕組みを組む仕事はたいてい誰かの兼務です。営業企画の一人が、夜にExcelとSFAの設定を直している。まずはその人を探すところからです。
次に、その人に何を持たせるかを決めます。選択肢は3つあります。
- ファネルの一区間を持たせる(Zapier型)。たとえば「展示会リードが商談になるまで」を一人の担当にする
- データの流れを持たせる(Clay型)。どのツールを使ってもよいが、顧客データの置き場所だけは一つに決め、その人が守る
- 外に任せる。欧州では雇う側の半数近くが代行会社です。ただし、何を作らせたかの設計図は自社に残す
どれを選んでも、仕事の受け方は変えたほうがよいでしょう。依頼を口頭で受けず、一覧にして、2週間ごとにまとめて出す。Clayのこのやり方は、人数が少ない会社ほど効きます。肩書きを付けるのは、その後で十分です。




