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Salesforceは営業を減らさず、手つかずのリードをAIに回した

Salesforceは自社の営業でAIエージェントを使い、4か月で13万件のリードに連絡して3,200件の商談を作りました。一方で営業は約1万5,000人と過去最多です。AIに渡したのは、人が手を付けられなかった仕事でした。

文:Growth AX 編集部 読了 3分

Salesforceは、営業向けAIエージェントを自社の営業組織で先に使っています。2026年3月に公表した数字は、4か月で13万件のリードへの連絡と3,200件の商談でした。同じ年、同社の営業人員は過去最多の水準にあります。AIは人の代わりではなく、人が届かなかった場所に置かれました。

4か月で13万件、商談は3,200件

Salesforceは2026年3月、営業向けのエージェント群「Agentforce Sales」を発表しました。見込み客の洗い出し、リードの育成と日程調整、企業調査と商談準備、パイプライン管理、見積もり、パートナー支援。それぞれを担うエージェントが用意されています。エージェントの動きには、最終的に営業が承認を出す設計です。

同じ発表で、営業部門プレジデントのアダム・アルファノ氏が自社での結果を明かしました。対象は、これまで誰も手を付けていなかったリードです。4か月でエージェントが13万件に連絡し、3,200件の商談が生まれました。単純に割ると、連絡したリードの約2.5%が商談になった計算です。同氏は翌年にこの数字が10倍になると見込んでいます。

9月には、さらに長い期間を担うエージェントも発表されました。調査から接触までを、営業と組んで数週間から数か月かけて進める外向け営業エージェント「Hunter」です。試験提供中で、一般提供は2026年11月の予定。問い合わせ経由のリードを見極めて商談にする「Piper」は、すでに提供が始まっています。Salesforceの発表によると、導入企業のPerkでは、営業パイプラインの60%をHunterが作っています。

それでも営業は過去最多

注目したいのは人員の側です。CX Todayの2026年4月の記事によると、Salesforceの従業員は8万3,000人超で過去最多。うち営業は約1万5,000人です。マーク・ベニオフCEOは「営業はこれまでで一番多い」と述べています。

ベニオフ氏の説明はこうです。エージェントはリードの見極め、追客、パイプラインのデータ整備といった量の仕事を受け持つ。人の営業は、顧客と信頼を築き、何ができるかを説明する。取引先が小さな会社でも大きな政府機関でも、各アカウントには相手と向き合う人が要る、という考えです。

13万件のリードは、もともと人が手を付けていなかったものでした。エージェントは人の仕事を奪ったのではなく、空いていた穴を埋めています。人員を減らさずに商談を増やす。Salesforceの使い方は、その順番を示しています。

なぜ「手つかずのリード」から始めたのか

理由は3つ考えられます。

まず、失うものが小さい。誰も追っていないリードなら、エージェントの出来が悪くても、既存の商談や関係を壊しません。次に、効果を測りやすい。ゼロだった商談がいくつ生まれたかを数えれば、そのまま成果になります。最後に、量の仕事だという点。13万件に人が連絡するには膨大な人手が要ります。エージェントにとっては、件数が増えても手間はほとんど変わりません。

一方で、ここで示された数字はすべてSalesforce自身の発表です。商談のうち何件が受注に至ったかは公表されていません。2.5%という数字は、自社の水準と比べる目安として扱うのが妥当です。

日本の事業責任者が、明日考えること

売上10〜100億円規模のBtoB事業でも、MAやSFAの中には、誰も追っていないリードが積み上がっています。展示会で集めた名刺、資料をダウンロードしただけの人、失注後に放置した商談。まずはこれを数えることから始めてください。何件あり、最後に誰がいつ連絡したのか。

次に、AIに渡す範囲を決めます。Salesforceが最初に渡したのは、人が手を付けていない部分だけでした。既存顧客や進行中の商談はいったん外し、休眠リードの掘り起こしに絞る。失敗しても既存の売上に響かない範囲から始められます。

3つ目は「商談」の定義です。エージェントが作った商談を営業が受け取らなければ、数字は意味を持ちません。どの条件を満たせば営業に渡すのか。営業とマーケティングの間で、受け渡しの基準を先に決めておく必要があります。

最後に、人員計画の考え方。AIの導入を、営業の人数を減らす話から始めると現場は止まります。Salesforceは人を減らさず、人が届かなかった仕事をAIに回しました。自社の営業が本当は追いたかったのに追えていない顧客はどこか。そこから逆算すると、AIに任せる仕事の輪郭が見えてきます。