営業とマーケの現場で、AIエージェントの導入が先に進んでいます。ところが、エージェントが読み書きするCRMのデータは、その速さに追いついていません。2026年夏以降に出た2つの調査が、そのずれを数字で示しました。
9割が導入、3割は「何体動いているか分からない」
リード振り分けツールのLeanDataは2026年7月、営業・マーケ・RevOpsの責任者157人の調査をまとめました。少なくとも1つのAIエージェントを導入済みの会社は93%。エージェントの出どころで最も多いのは、既存ツールに付いてきたAI機能で69%でした。自社で選んで入れたというより、使っているSFAやMAに後から載ってきた形です。
問題はその先です。AI活用の最大の課題に「データの質」を挙げた人は55%。データの乱れでGTMの実行が損なわれたという人は70%にのぼります。
具体的な事故も並びます。複数のツールやエージェントが同じ見込み客に連絡した、が27%。エージェントが担当や地域のルールを飛び越えた、が14%。記録が残らないままレコードに操作が加えられていた、が30%です。自社のレコードに何体のエージェントが手を出しているか答えられない人も、3人に1人近くいました。
現場は「掃除なしでは任せられない」と見ている
売り手の側も同じ見方です。ContentGripが紹介したFirmableの調査(BtoBの営業職220人)では、90%が何らかの営業業務にAIを使っていました。ところが、今の営業データのままエージェントが動けると考える人は14%だけです。確認なしでエージェントに営業行動を任せられるという人は16%。エージェントが悪いデータで動いたら自分が責められる、と答えた人は50%いました。自社の営業ツール群は手作業の穴埋めで成り立っている、という人も51%です。
詰まりはデータより「決めごと」にある
LeanDataの調査は、AIが止まる原因も聞いています。悪いデータが45%、文書になっていない業務手順が37%、部門の分断が32%でした。データの汚れだけが原因ではありません。誰がどの顧客を持つか、どの順番で連絡するかが書かれていない。そこにエージェントが入ると、人なら空気で避けていた衝突が、そのまま起きます。
責任の置き場所も曖昧です。GTMでのAI戦略の持ち主は、部門横断の委員会が42%、決まっていないが19%、RevOpsが18%でした。さらに、GTMオペレーションのチームの66%は、すでに手一杯か、抱えきれない仕事を持っていると答えています。新しい書き手が増えるのに、見張る人の手は空いていない。これが今の姿です。
日本の事業責任者が、明日考えること
売上10〜100億円規模の日本のBtoB事業でも、この流れは避けられません。エージェントは、自社で選ぶ前に、契約中のSFAやMAの新機能としてやってきます。LeanDataの69%という数字はそれを示しています。
だから、データ全体をきれいにしてから、という順番は取らなくてよいのです。先に決めるべきは次の3つです。
- 書き手の一覧:CRMの顧客データに書き込んでいるのは誰と何か。人、MAの自動処理、連携ツール、AI機能を全部並べる。答えられない状態は、調査の3人に1人と同じです
- 担当と連絡順のルール:どの会社を誰が持つか、商談中の顧客にMAのメールを止めるか。人に口頭で伝えていたことを、文章にする
- 持ち主を一人:委員会ではなく、一人に決める。その人が書き込みの記録を見られるようにしておく
掃除は、狙う顧客の数百社から始めれば足ります。重複と担当者の欠けだけを直す。全件の整備を待つより、エージェントがその数百社に触れる前に、ルールと見張り役を置くほうが先です。




