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データ・基盤

NRR中央値は102%。席数課金は100%を割った

AlephとBenchmarkitの2026年版ベンチマークで、BtoB SaaSの売上継続率(NRR)の中央値は102%。従量課金は108%、席数課金は98%と、課金の形で10ポイントの差が開きました。

文:Growth AX 編集部 読了 3分

既存顧客からの売上は、1年でどれだけ伸びたのか。米国の2つのベンチマーク調査が、2025年通年の実績をまとめました。中央値は100%をわずかに超える水準にとどまり、下位の企業はさらに沈んでいます。課金の形による差も、はっきり数字に出ました。

何が起きているか

AlephとBenchmarkitが2026年6月に公表した「2026 SaaS & AI Performance Benchmarks」は、BtoB SaaS企業とAI専業企業の計342社を対象にしています。売上継続率(NRR:既存顧客の売上が1年でどれだけ増減したか)は230社のデータから算出しました。

中央値は102%です。上位25%の境目は108%、下位25%の境目は92%でした。下位25%の境目は2024年の95%から下がり、2023年の底も下回っています。上位側も110〜111%から108%に下がりました。中央値はほぼ横ばいです。

差が最も大きく出たのは課金の形です。従量課金の企業はNRRの中央値が108%、席数課金の企業は98%でした。席数課金の典型的な企業は、既存顧客からの売上を1年で減らしていることになります。

成長率との関係も明確です。年50%超で伸びる企業のNRR中央値は111%、10%未満の企業は92%でした。売上規模では1億ドル超の企業が103%、500万ドル未満は94%。顧客単価では、年額2.5万〜5万ドルの帯が105%だった一方、1万〜2.5万ドルの帯は2025年に初めて100%を割りました。解約と縮小だけを見る総売上継続率(GRR)の中央値は84%です。

別の調査も同じ傾向を示しています。SaaS Capitalが4月に公表した、外部資本を入れていないARR300万〜2,000万ドルの企業の数字は、NRR中央値103%、GRR中央値91%でした。どちらも前年からほぼ横ばいです。一方で売上成長率の中央値は20%から15%に下がりました。

なぜ差が開くのか

席数課金の売上は、顧客企業の利用者数に縛られます。顧客が採用を絞れば、製品の価値が上がっても売上は増えません。従量課金は、顧客が使うほど売上が増えます。価値と売上が同じ方向に動くため、既存顧客からの伸びが出やすい構造です。

もう1つ読み取れるのは、二極化です。中央値が動かない一方で、下位25%の水準は2年前より悪くなりました。既存顧客を伸ばせる会社と、毎年1割近くを失う会社の差が広がっています。新規獲得の伸びが鈍る中で、既存顧客の扱いが、成長率を左右する局面に入っています。

日本の事業責任者が明日考えること

売上10〜100億円規模の日本のBtoB事業では、NRRをそもそも測っていない会社が少なくありません。SFAには新規の商談が並び、既存顧客の売上は経理の数字の中に埋もれています。

最初の一歩は、前年と同じ顧客群の売上を比べることです。今年の既存顧客売上を、同じ顧客の前年売上で割る。これだけでNRRの概算が出ます。解約と減額だけを引いたGRRも並べて出します。102%、84%というベンチマーク水準と比べれば、自社の課題が「失っている」のか「伸ばせていない」のかが分かります。

次に、SFAの商談の種類を分けます。「新規」「更新」「拡大(追加購入・上位移行)」を別の種類として登録するだけで、拡大の件数と金額が毎月見えるようになります。拡大の商談が誰の担当にもなっていなければ、それが最初に直す点です。

最後に、課金の形を点検します。自社の売上が利用者数や契約数量に比例しているなら、顧客の事業が伸びても売上は伸びない構造です。課金体系をすぐに変えなくても、利用量に連動する追加メニューを1つ足すことは検討できます。10ポイントの差は、価格表の作り方から生まれています。