Salesforceが2026年版の「State of Sales」を公表しました。日本を含む22か国、4,050人の営業職に聞いた調査です(2025年8〜9月実施)。営業の9割がAIに期待を寄せる一方、売ることに使えている時間は今も半分に届いていません。
何が起きているか
Salesforceの発表によると、営業担当者が売ることに使っている時間は平均40%です。Z世代の若手は35%にとどまり、手作業のデータ入力で週におよそ2時間を失っています。
AIはすでに広く入っています。何らかの形でAIを使う営業組織は87%。AIエージェントを使ったことがある営業担当者は54%で、2027年までに使う予定の人は9割近くに上ります。ただし、エージェントで見込み客の調査時間が34%、メール作成時間が36%減るという数字は、本人たちの見込みです。実測ではありません。
新規開拓の手も足りていません。営業担当者の48%が「十分な新規開拓をする余力がない」と答えました。週のほぼ丸1日を見込み客探しに使っているにもかかわらず、です。時間をかけても足りない。この感覚が、AIへの期待の大きさにつながっています。AIを使っている営業担当者の87%は、仕事のストレスが減ったと答えました。
若手が育つ場が細っている
この調査で目を引くのは、若手の育成に関する結果です。Z世代の営業担当者の46%は、自分の商談の会話にフィードバックをほとんどもらえていません。47%は、顧客と話す前のロールプレイが足りないと答えました。
若手が挙げる最大の障害は「上司に時間がない」こと。年長の世代は「データにアクセスできない」を挙げており、悩みの中身が世代で分かれています。Z世代は最も転職に前向きな世代でもあり、その理由の筆頭は昇進の機会が限られていることでした。
AIで事務作業を減らしても、浮いた時間が育成に回らなければ若手は残りません。上司の時間をどう生み出すかは、ツールでは片づかない経営の問題です。
AIの足を引っ張るのはデータ
AIを使っている営業責任者の51%が、システムが分断されていてAIの取り組みが遅れていると答えました。営業職の74%は、いまデータの整理に力を入れています。
成果との関係も出ています。前年より売上を大きく伸ばした営業担当者の79%がデータの整備を重視していました。売上が横ばいか減った層では54%です。高成果の層は、見込み客開拓のエージェントを使う割合も1.7倍高いとされます。ただしこれは相関で、因果を示したものではありません。
Salesforceの営業部門を率いるアダム・アルファノ氏は「営業AIエージェントの決め手は、統合されたデータだ」と述べています。CX Todayも同じ数字を引き、データの整理を前提条件として扱いました。
日本の事業責任者にとっての意味
SFAもMAも入っている。でも入力が粗く、部門ごとに顧客の情報がばらばら。売上10〜100億円規模の日本のBtoB事業では、よくある状態です。この調査は、その状態のままAIを入れても効果が出にくいことを示しています。
明日、考えたいことは三つです。
一つ目は、自社の営業が売ることに何割の時間を使っているかを把握することです。40%という数字と比べられるだけで、議論の出発点が変わります。日報やSFAの活動記録から粗く出すだけでも十分です。
二つ目は、データを整える担当と期限を決めることです。顧客マスタの重複、商談段階の定義のずれ、MAとSFAで別々の会社名。どれも、AIの前に片づけておくべき課題です。「いつか直す」のままにしない。
三つ目は、若手の商談に誰が、週に何回フィードバックしているかを確かめることです。上司が忙しくて見られないなら、事務作業をAIに回して空いた時間の使い道を、育成と先に決めておく。時間が浮いてから考えると、別の業務で埋まります。




